君の分も生きるなんて言えない
学部時代、僕は精神的に追い詰められていた時期があった。
そんな時期に思わぬ悪い知らせが入った。
友人が亡くなった。
彼は自ら死を選んだ.
一緒によく遊ぶという程では無かったけど、授業や演習等で一緒になったりしてからはよく話したりしていた。
不思議と波長の合う友人だった。
学業面でも優秀だったし、真面目で穏やかで僕のつまらない冗談にも笑ってくれる人だった。
それぞれ違う研究室に配属されてからは、たまに大学の廊下ですれ違った時に少し話す程度になってしまっていたのだけれど。
彼が亡くなったという知らせを聞いて、僕は悲しかった。
僕の状況が状況だったので、彼の死で気が動転してしまった。
精神的に参ってしまっていたからか、死が身近というか、リアルに感じられて辛かったのだと、今になって思う。
そして何より、彼がいなくなってしまったことが悲しかった。
彼は、どんなに辛く、苦しかったのだろう。
お互い忙しく接点が少なくなってしまっていたとはいえ、廊下ですれ違った時に変わったことに気がつけてあげていれば・・・なんていうことでも自分を責めてしまう。
真面目な彼が、どれだけ苦しい思いをしたのか。
これからだというところで命を失った無念さ。
その人生は彼だけのもので、僕たちが生きることのできない人生。
君の分も生きるなんてことは絶対に言えない。
僕にできるのは,自分の「生」を噛みしめて毎日を生きることだ。
彼の死を、彼のことを、僕は一生忘れないと思う.